2013年04月21日

15年ぶりの衝撃

羽生七冠誕生以来、久々に将棋が世間に届いた一大イベント「第2回電王戦」は、最終局で大将格の三浦八段が敗れ、人間側の1勝3敗1引き分けに終わりました。

ロクに棋譜も読めないド素人の僕にとって、プロの対局というのは妙手・鬼手を味わうものというよりは多分に人間を見る競技なわけで、A級8段のトッププロがコンピュータに敗れたところで、まして相手が1秒間に2億7千万手読むお化けマシンであればなおさら、今後の将棋を見る目に変化などない、と強弁したいところですが、やっぱりこの結果は暗い予感を伴う衝撃的なものでして・・。

今回の敗戦を見て思い出したのは、97年10月の高田延彦VSヒクソン・グレイシー戦でした。あれってつまりは、高田個人の敗戦というよりはプロレスの道場幻想がグレイシー柔術、ひいては総合格闘技という現実に敗れたという幻想の崩壊、ジャンルの敗北だったわけで、同じく奨励会という神童・天才の集まりである奨励会という道場的存在を持ち、その狭き門をくぐりぬけた怪物たちだけがプロ棋士となれ、そしてその中でも図抜けた大天才のみがA級八段になれるというプロ棋士幻想(幻想じゃなくて、実際そうなわけですけど)が、コンピュータの圧倒的な計算能力という現実の前に屈したという今回の事態は15年前の悲劇とまったく同様の構図を持っており、プオタにして将棋ファンの僕にはことさらぐっとくるものがあります。

まだ現時点では東大のパソコン670台を繋いで計算しないとトッププロに完勝するレベルにはないと言っていいと思いますが、こんなもん数年で670台が半分になってあっという間に5台、10台になる世界なわけで、そのうち真剣にプロのカンニング対策をやらなきゃならんでしょうし、既に世界チャンピオンがコンピュータにまったく歯が立たなくなっているチェスと同様に、スポンサーの撤退によるタイトルの賞金の激減とその結果としての「将棋で食えないプロ棋士」の激増までもが予想されるわけで、将棋というジャンルそのものの土台を揺るがす話が今後次々に出てくると思います。

もちろん能力面におけるプロ棋士の絶対的な凄みが今回の敗戦で変わるわけではありませんが、コンピュータと比較して当然相対的にその凄みが減少したわけで、この困難な状況の中で将棋界はどう変わっていくのか。もはや「最強」を捨て、その代わりに「最高」を目指して勢いを取り戻しつつある新日本プロレス(個人的にはこの方向性は嫌いなんですが)のごとくに将棋界が変化していくことはできるのか。正直目をそらせたい気持ちはありますが、それでもファンとして今後も将棋には注目していきたいと思います。
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