2012年10月07日

Morceau

35歳を迎える頃、ふと、自分の生活を見直そうという気持ちになった。ありふれた話だ。「もう若くない」という思いが背中を押した、なんていう類の。正確に言えば、自分には「もう若くない」という実感は肉体的にも、もちろん精神的にもまだなくて、ではなにかというと「俺もいい年にもなってまだ仕事中に眠くなったりするんだから恥ずかしいよなあ」なんてことを思う回数が増えてきたということだが、まあつまりは一緒のことだ。

見直す気になることと、実際に行動に起こすことの間には暗くて深い川がある。その川を渡る具体的なきっかけになったのは、朝のニュースでやっていた「寝る前2時間はテレビなどを消して部屋を暗くすると眠りが深くなる」というリポート。残業を終えて真夜中に家にたどり着いた日だった。ひどく疲れていたし、家族も寝入っていた。いつもは習慣的にテレビをつけるところだが、無意識にリモコンを探すべくテーブルの上に目をやった時に、そのリポートのことを思い出したのだ。ふとした思いつきを決断するに至ったのは、テレビ番組が「テレビを消せ」と主張する皮肉が面白かったからかもしれない。ともかくその日はテレビをつけず、部屋の明かりも消したままで、服を脱いでシャワーを浴び、そのまま眠った。さすがに浴室の電気は点けたけど。

翌朝の目覚めは確かに快適だった。満員電車も苦にならず、仕事中も驚くほど身体が動く。仕事に対する意欲も溢れんばかりだ。こんないい方法はない、と新しいおもちゃを買ってもらった子供のように僕ははしゃいだ。実際、それはおもちゃなのだ。ひとつの方法を堪能すると、次のものに手を伸ばしたくなる。仮面ライダーのベルトを買うと、次は武器がほしくなるのと同じこと。カネがかかるという点でも、健康法とおもちゃはよく似ている。

「眠りの深さ」というキーワードから僕が次に目をつけたのが、高級マットレスだ。最近ぱっとしないフィギュアスケーターが愛用していることをアピールして、積極的に新聞に広告を打っているものだ。そう。僕はいまだに新聞などというアナログなものにカネを払っている。多分に妻のリクエストによるものだが。ともあれこのマット。価格は4万円。こんなものがオーディオよりも新しいスマホよりも欲しくなるなんて、と自分でも不思議になる。

加湿器を買うときは「そんなものは贅沢品だ」とかなんとかぶつぶつ言ってたくせに、と妻は不満顔。でも人間は考えが変わるもんだよ。変わらないというのは進歩がないということ。そう思わない?という僕の言葉に「進歩なんだか退歩なんだかわからないけど」とは妻の弁。進歩か退歩かは誰にもわからない以上、進歩だと信じてやるしかないじゃないか。なんて、そんな青臭いことは口に出して言わないけど。
posted by コピ at 15:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 商社な日々 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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